ハマったら抜け出せないのが沼です。抜け出そうとして、藻掻けばさらに沼にハマって抜け出せなくなります。沼から出たければ誰か第三者に助け出してもらう他はありません。
ハマって抜け出せなくなる消費を沼消費と言うそうです。アイドル関連の購買を止められなかったりします。ジローラーメンにハマるなんてのもあります。週に一度は食べないと生きていけない。海外旅行なんてのも沼に近いです。世界地図を見ながら、ここは行った、次はここに行きたい。なんて、想像しながらゆったりとするなんてのは、ありますね。
さて、従業員も仕事や会社の沼にハマってしまう場合があります。悲惨なのがブラック企業ですかね。なぜか、深夜まで残業して身体に変調を来しているのに、仕事が止められない人がいます。営業成績が気になって休日も出勤したくなります。それでなくても、会社に行って仕事をしないと調子が悪くなるって人も居ますよね。最悪なのが、定年退職後にやることがなくて、会社の最寄り駅に行ってしまったりします。沼仕事とでも呼ぶのでしょうか。
でも、経営者からすれば、沼消費や沼仕事にハマってしまう人は歓迎ですよね。はめてしまえば、あとは自動的にチャリンチャリンとお金が入ってくるのですからね。人を沼に落とす方法があるのです。勉強しましょう。
人を沼にはめてしまう方法は、行動経済学で明らかにされているそうです。三つの原則があります。
1)サンクコスト(埋没費用)によるやめられない感づくり
サンクコスト(埋没費用)とは既に使ってしまって、二度と戻らない時間やお金、労力のことをです。サンクコストを意識し過ぎると、それまで以上に時間やお金、労力を費やしてしまうことがあるのです。やめてしまえば、サンクコストが確定して損失が明らかになってしまいます。人は損失回避モードで判断する場合、損失を明らかにする悲しさは、やめる効果(嬉しさ)の何倍もあるため、止められないのです。
コンコルドの開発なんてのはその例になります。開発中に問題が多発している、世の中の流れが変化している、などを考えれば開発は中止すべきだったのです。でも、サンクコストを意識するあまり組織的にも開発を止められなかったのです。コンコルドは16機のみ生産されて、サンクコストを上回る莫大な損失を発生させたのでした。
2)保有効果による愛着づくり
保有効果とは自分が持っているものに高い価値を置くという心理的バイアスのことだそうです。自分の持ち物を失うことの悲しみは、得ることの嬉しさの2.5倍である、と言われます。今の状態を維持したい、このまま持っていたいと思う気持ちは、損失回避モードです。アイドルでも仕事のことでも、誰かに一度でも自分のもの/自分のことと思わせれば、その人はこちらのものです。一度、持たせてしまえば簡単には捨てられません。捨てるというのは、損失なのですからね。アイドルグッズを一度でも買わせる、会社の一員として一度は迎え入れる。そんな経験をさせられたら、もうその人は、アイドルや会社のとりこです。
でも、人の気持ちを継続させるのは難しいことです。アイドルもそれなりに努力しなくてはなりません。お付き合い禁止なんてのを公表するのも、「私」は「あなたのもの」と思わせる効果があるのでしょう。従業員を前にして「我が社」なんて言ってのける経営者も、会社は「あなたのもの」と思わせたいのでしょう。
3)同調効果によるつながりづくり
自分で判断したなんて思うのは、幻想なのです。人は他人の影響を受けて、自然に同じ行動をとってしまうものなんです。選択や判断が難しい場合に、他人の判断を、自分の判断としてしまうこtがあるのです。周りの行動と同じ行動をとってしまうことを同調効果と呼ぶそうです。アイドルの握手会で人を並ばせたり、総選挙でアイドルの順位をつけてみたり、ファンにつながりを感じさせるのです。本当につながせる必要はありません、感じさせるだけで良いのです。営業会社なら営業成績を壁に貼りだしたりして、営業部員全員が参加しているゲームのように感じさせるのです。営業部員は、身体がおかしくなるまで、ハメられていると気づくまで、営業活動を続けるでしょう。
以上の話は、プロスペクト理論からの解説でした。自分の行動を振り返る際には気にしてもよいでしょうね。ポイントは価値関数と参照点、損失回避モードです。
参考文献:「9割の人間は行動経済学のカモである」 橋本之克 経済界