世の中、いろんな俗説が溢れています。特に見聞きする俗説が多いところは、株式投資の世界です。株価の上がり下がりの「折れ線グラフ」をよく見ると、なんだか法則性が感じられることがあります。なぜ上がったのか、なぜ下がったのか、説明したくなりますよね。しかし、株価の上がり下がりはランダムウォークであり、予測不能であることが統計的に証明されているそうです。ありもしない因果関係に騙されるだけならよいですが、詐欺師に大事なお金をさらわれることがないようにしましょうね。
また、テレビを見ると馬鹿になる、健康診断に毎年いけば寿命が伸びる、いろんな説があるようですが、統計的には否定されているそうです。データの数字を見るだけでなく、疑ってみて、因果関係が本当にあるのか考えることが重要です。次に説明していく項目を順になぞっていただければ、ちょっとぐらいは、わかってもらえると思います。
目次
因果関係
因果関係がある!と言われる相関関係は、原因と結果の間につながりがあることを言います。原因があったから結果がある、と言えれば(証明できれば)、因果関係があると認めることができます。数学で言えば、関数であるとでも言うのでしょうか。最近の例だと、ワクチンを接種すると新型コロナに感染しない、これは因果関係であると言えます。100%でなくても良いのです。ファイザーのワクチンを二回接種すれば感染しない確率が90%まで高まると言われてるので、因果関係があると言えるでしょう。
疑似相関
原因と結果の間につながりがないのに、なんだか関係がありそうに見える場合は、これを疑似相関と言います。原因と結果の間につながりが無いのに、原因が変わったときに、あたかもそれにつられて変化するように結果がついてくるように見えるのが疑似相関です。結果を変えたいと思って、原因を何等かの力で操作しても結果が思うようにならない場合があります。これです。テルテル坊主などの神頼み、ジンクスなんてのもそうでしょう。気慰みにやる分にはよいですが、本気になってはいけません。変なツボを売りつけられることになります。
因果推論
原因と結果に本当に因果関係にあるのか、調べることを「因果推論」と呼びます。本当に因果関係があるのか疑う場合は、次の三つのチェックを行いましょう。
チェック1 偶然を疑う
「見せかけの相関を因果関係と勘違いする人」が多いのが株式投資の世界です。まずは、まったくの偶然なのではないか?と疑ってみましょう。近所の八百屋が倒産したから日経平均が下がったとか、ぐらいなら良いです。子供じみていて誰も信じないでしょう。菅首相のご機嫌が悪いときは日経平均が下がる、ま、いろいろあります。
チェック2 隠れた変数を疑う
これは、よくあることなのですが、変数X、と変数Yが相関している場合、変数Xが変数Yに影響を与えているのではなく、隠れた変数Rが変数Xと変数Yに影響を与えているような場合です。XとYに因果関係があると勘違いしてしまって、Yを減らしたいから、無理やりXを減らしても、効果が無かったというような場合です。こういうときは、変数Rを操作しないとだめなのです。変数Rを交絡因子と呼びます。
例えば、テレビを見ない子供の成績が上がる、なんてのを信じているの人がいますね。実はその裏には、教育熱心な親がいたなんてことがあります。重要なのは、親が教育熱心になることで、テレビの視聴は関係なかったなんてことになります。教育不熱心な家庭でテレビを捨てても子供の成績が上がらなかったなんてことになるのでしょう。テレビがもったいなかった!で終わってしまいます。
チェック3 因果の逆を疑う
相関関係のあるXとY、原因がXで結果がYだと思っていたら、原因がYで結果がXだったなんてこともあります。例えば、コロナ禍でマスクをしている人を多くみかけます。新型コロナ感染者が多くなっていくと同時に、街中でマスクをしている人が増えましたね。これって、因果を間違えると大変なことになるかもしれないです。マスクを原因、新型コロナ感染を結果、と考える為政者がいたら、「マスク禁止令」を出すかもしれません。こんな国だったら、新型コロナ感染が増えてしまうかもしれませんね。そんなことありえない!と思うかもしれませんが、分かりやすい例を出したまでですので、意外と騙されている人が多いのです。
反事実
それじゃあ、因果関係を証明するにはどうするの?と聞かれそうなので、ちょっとだけ説明します。原因X
と結果Yの因果関係を証明したいなら、仮に原因Xがなかったら、結果Yがどうなるかを見る必要があるのです。原因Xが無ければ結果Yが無かったということが証明できれば、因果関係を証明したことになります。
参考文献:「原因と結果」の経済学 中室牧子、津川友介 ダイヤモンド社