生物の増加は係数rと係数Kによって表現することができます。それぞれロジスティック曲線の係数です。rは内的自然増加率、Kは環境収容力と呼ばれます。増加率は時間当たりの増加率を現しています。Kの環境収容力は、その環境における生物の数の上限を意味しています。生物が増殖していく戦略における「rK戦略」と呼ばれています。
この曲線は、生物の増加を表すだけでなく、商品の市場での成長を表現することができるなど、経済学、経営学なども同様に使うことができます。
つまり、生物の増加速度を高めるためには、rやKの値を大きくすれば良いのである。rの増加率を増やすためには、卵や子供をたくさん産めば良いということになる。また、繁殖のスピードを速めて何度も何度も子供を産めば良い。それではKはどうであろう。
Kは環境によって定められた最大値なので、環境を変えない限りKを高めることはできない。生物にできることは、上限であるKの値いっぱいの個体数になるように、生存率を高めて個体数を減らさないことである。生存率を高めるためには、簡単に死なないような強い子供を作ることが大切である。しかし、話はそれほど簡単ではない。
rを高めようとして、卵や子供の数を増やそうとすれば、一個あたりの卵はどうしても小さくなるし、一匹一匹の子供も小さく弱くなってしまう。Kの個体数を満たすのに必要な生存率が下がってしまうからである。
そこで生存率を高めようと、栄養分を分けて大きな卵やおおきくて丈夫な子供を産もうとすれば、どうしても卵や子供の数は少なくなってしまう。さらに生存率を高めるために、親が卵を守ったり、子育てをしようとすれば、面倒を見ることができる卵や子供の数は限られるし、何よりも子守りをしている限り、次の繁殖をすることができない。
rを高めればKは低下してしまう。一方、Kを高めようとすればrを犠牲にせざるを得ない。つまり、rとKとは、あちらを立てればことらが立たずのトレードオフの関係にあるのだ。
弱くて小さな卵をたくさん産むか、強くて大きな卵を少し産むか、すべての生物はこのジレンマに悩まされているのである。そして、増加繁殖率を優先する選択がr戦略、生存率を優先する選択がK戦略と呼ばれているのである。
引用元:稲垣栄洋「38億年の生命史に学ぶ生存戦略」
ヒトが地球上を支配するようになったのも、このrK戦略をうまく使ったのではないでしょうか。ヒトは繁殖期はなく一年中繁殖(子供を産む)することができる。生まれた子供の世話は、親だけでなく「おばあちゃん」「お姉さん」が行う。こんなことによって、子供を多く産んで、親以外の血縁のメスが子供の世話をする。そんなこんなで、ヒトが増えたのではないでしょうか。